ベイスンの効果について

血糖値を下げる薬の中に、α-グルコシダーゼ阻害剤というものがあります。
その中でも最もよく売れているのは武田のベイスンでしょう。(他セイブル、グルコバイあり)
これは一体どのようにして効果を発揮するのでしょう?
そしてベイスンの用法は1日3回毎食直前が基本ですが、果たして1回服用するとどのくらい効いているのでしょうか。
(実は後者について、ベイスンのインタビューフォームを見ても「作用発現時間・持続時間 該当データなし」となっております。)



ベイスンの作用機序ですが、
食事によって接種した炭水化物や糖分など(多糖類)は、体内に入った後、いくつかの酵素によって分解された後、小腸から吸収されることになります。
この過程で炭水化物・糖分は、最終的には二糖類(糖が2つくっついたもの)から、糖分の最小単位である単糖類(主にグルコース)にまで分解されないと、エネルギーとして小腸から吸収することができません。
この二糖類 → 単糖類への分解を担っている酵素がα-グルコシダーゼであり、ベイスンはこの酵素を阻害する作用があります。


では、ベイスンを飲むと食べたものが吸収されなくなるのか?というと、そうではなくて、
あくまでも吸収を遅らせるという作用です。

つまり、小腸には無数のα-グルコシダーゼがあり、通常用量のベイスンではこれら全てを阻害するには到底及びません。(もちろん全てを阻害できるくらい多量のものを飲めば、完全に吸収は阻害されます)
ベイスンが小腸まで到達した後、上部から順に酵素に結合していくので、
小腸上部のα-グルコシダーゼは阻害された状態ですが、小腸下部のα-グルコシダーゼはまだ活きたままなのです。

つまりどういうことかというと、
通常ならば食事をした後、小腸上部からグルコースの吸収が始まるわけですが、
(正常ならば大体30分〜60分くらいで血中の血糖値はピークになります)
ベイスンを飲むと小腸上部で吸収されるはずの糖分がなかなか吸収されず、食べたものが小腸下部にまで到達してようやく分解されて吸収されるようになるということです。

なのでベイスンを飲んだからと言って、吸収が少なくなるのではありません。
トータルとして吸収される糖分量・エネルギーは同じだということです。


では、それの何がよいかというと、食後血糖値が急にぐんっとあがるのを防ぐということなのです。


血糖値が高くなるとそれを下げるためにインスリンをたくさん出さなければなりません。
インスリンがたくさん出ると、糖分・脂肪分が貯蓄されやすくなり、肥満の原因になります。
一生のうちで出せるインスリンの量というものには限界があるので、あまりにも血糖値が高い状態が続くと膵臓が疲れてきて、インスリンが出にくくなります。
また、太ってきたりすると、インスリンが体内で効きにくくなり、筋肉などにエネルギーが取り込まれにくくなってしまいます。
そして血糖値が高いと、血液中の糖分は血管に悪さをし始めます。
そう、糖尿病で何が怖いかというと、血管がだめになってしまうことに他なりません。
症状が出やすいのが細い血管だと目、脚、腎臓、
太い血管がだめになると、心筋梗塞、脳梗塞を起こすことになります。

つまりベイスンは常日頃から血糖値が高い人に対して、
食後にぐんっと血糖値があがってしまう状態を抑えて、ゆっくりゆっくりなだらかに血糖値があがるような状態にしてやりましょう、という薬なのです。

ということは、決められた食事を一気にガツガツ食べるのではなくて、時間をかけてゆっくり噛みながらゆっくりゆっくり食事をすると、実はベイスンを飲んでるのと似たような状態になります。
(忙しい我々現代人にとってはそんな食生活を続けるのはなかなか難しいことであるかとは思いますが…)
ベイスンの副作用は、腹部膨満感、放屁、下痢が断トツですが、副作用などでベイスンの服用をあきらめてしまった人は、こういった食事の仕方をすれば、より血糖値が低く抑えられます。


そもそも、ベイスンの開発は実はやせ薬を目的として開発されていましたが、
その目的を達成できるような量を飲むとなるとあまりにも下痢などの副作用がひどくて途中で断念することになったそうです。

それに加えて、実はベイスンは現在スイッチOTCの候補になっています。(つまり市販薬として発売される可能性があるということです)
(これには学会や専門の方などは反対しているようですが)

ベイスンは比較的安全性が確立されている上、(単独で飲む場合には低血糖になることは稀です。)
食事療法・運動療法を行っても血糖値が改善されない人に対して、2型糖尿病の発症抑制を目的とした保険適用があります。
つまり、糖尿病と診断される前から、血糖値が高めの人はベイスンを早めに飲んで、糖尿病に移行するのを防ぎましょうということが言われているのです。


(ちなみにお気づきかと思いますが、ベイスンは食事に先回りしないと本来の効果が発揮できません。
なので食事より前に服用するよう心がけて下さい。)



ところで、ベイスンは小腸内で効果が出る薬であり、血中に吸収されることはほとんどありません。
普通の薬なら血中の濃度を測ることで、薬がいつまで効いてるかということが推測できるのですが、ベイスンの場合はそうはいきません。
では、どのくらい効き目があるのか。(作用時間)
メーカーに聞いたところ、ヒトでの臨床試験で、2時間〜4時間くらいは効果が続いているようなデータがあるということです。
ベイスンがα-グルコシダーゼに結合している間は阻害作用があると考えると、一度解離したりして失活するまでその作用が続くと考えれます。
ラットでの高用量の試験では6時間たっても小腸下部〜大腸にスクロースが吸収されず残ったままでした。
つまり高い用量ではそれくらいの時間(6時間)は少なくとも小腸下部に関しては阻害活性が続いてると考えれます。
しかし6時間後、肝心の小腸上部に関しては効き目がどうであるか不明です。
また、あまり長い時間が経つと、ベイスンの作用が仮に続いていたとしても、
小腸内部で新たなα-グルコシダーゼが生成している可能性があり、
その量によってはベイスンがあったとしても糖分は分解され吸収されることになります。

ベイスンの用法が基本1日3回であることを鑑みると、
通常用量では1回の服用で2回分の食事に対する効果をまかなうには不十分であるのでしょう。

つまり先に書いたとおり、個人差はあるにせよ、作用時間は大体3時間前後という考えが妥当なのかな、と個人的には思います。(詳しいデータがあるわけではないので断言はできませんが)



さて、糖尿病の治療の基本は食事療法・運動療法です。
何事にもやはり健康的な生活が一番。
将来、ベイスンが市販されるようなことがあるのかどうか定かではありませんが、
薬に頼る前に、自らの生活を見直すことができたら…と自分を戒める意味も込めて今日のところは終わりにしたいと思います。


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